取り組みに際する考え方
安全衛生と労災対策は2つで1つ
安全で清潔な労働環境が実現されていなければ、労働災害、すなわち事故や病気が発生する確率が高まります。その意味では《安全衛生》の課題は、労働災害防止のためのリスクマネネジメントで、労災対策の1つの側面であるとも言えるのです。
しかし、全ての労働災害を未然に防ぐことは不可能でしょう。そのため発生した労働災害に対しても、確実に対処する準備をしておかなければなりません。この事後対策への備えが、労災対策のもう1つの側面になります。
労働災害の内容も複雑化して来た
ただ労働災害は、作業現場での事故や運転中の事故等に際して生じる《身体上の問題》だけとは限りません。最近では特に《心の病》で職場に出られなくなることも、労働災害の1つとされるからです。もちろん《心の病》の全てに、会社が責任を負わなければならないわけではありません。しかし、たとえ私的な事象が要因でも、従業員から長期療養を求められると、その分会社は《貴重な働き手》を一時失うことになるのです。今、労災課題では《従業員の心身》への積極的ケアが求められているのです。
様々な感染症対策あるいは、空気や水の汚れ等への経営上のケアも、同じ線上にある課題です。
何からどう取り組むのか
まずは人の意識付けのための研修
安全衛生・労災対策に取り組む第一歩は、出退勤を含む事業活動上での《安全に対する意識付け》にあります。関係者の《注意力》が高まるだけで防げる災害は、決して少なくないからです。その意味では、1件の重大事故の裏に29件の軽傷事故があり、更に29件の裏に300件の無傷事故(ヒヤリハット)があるという《ハインリッヒ》の法則は、注目に値するのです。ヒヤリとしたり、ハっとしたりした《体験》を社内で共有することができれば、その背後に潜む軽傷事故や重大事故の予防効果が期待できるからです。
そのため、ヒヤリハットの重要性に敏感になる意識と、その事象を他者と共有しようとする意識が、安全衛生・労災対策の基礎とならなければならないのです。
問題となりそうな状況の早期発見
しかし、《体験の共有》を待ってばかりはいられません。特に職場内や主な社外の労働環境等の《現場検証》は欠かせないでしょう。安全意識には、どうしても《個人差》が出てしまいがちだからです。
そのため、経営視点から、事前に問題のありそうな箇所を見つけ出し、安全策あるいは労災防止策を考えるという手順が必要になるのです。当事務所では、上記の《意識研修》と合わせ、この《現場検証》についても、これまでの様々な経験をベースに、ご支援しています。
社内の諸制度の整備への取り組み
上記の《安全意識》と《事前防止》の成果を、組織内に定着させるには、その内容を《分かりやすいルールや制度》にしておくことが肝要になります。しかも、そのルールや制度は、一般的な法律のように《罰則》を伴うものと言うよりは、違反が生じるごとに《違反者が違反内容の説明責任を負う》ような形が妥当かも知れません。
その理由は、安全衛生や労災対策においては、絶対に守るべきルールや制度を作ることよりも、組織を挙げて《安全に取り組む気運》を実践的に盛り上げて行くことを、より重視すべきだからです。詳しくは、実際にご相談を受けながら、現実的なルールや制度作りのお手伝いをする形になると思います。
労災認定を受ける手続きの重要性
労働災害が発生した場合、適切な手続きを行って《労災認定》を受けると、労働保険から《療養(補償)給付金》や《休業(補償)給付金》を、被害者本人が受け取れます。ただし、その申請手続き、原則として被災者本人が行わなければなりません。
従業員は『会社に相談すればサポートを受けられる』と考えるのが普通ですので、会社としては、常にサポート体制を意識しておく必要があります。この対応を誤ったり、申請期限までに申請を行わなかったりする場合、給付金が受け取れなくなるので要注意です。
従業員の心身の健康管理義務
身体の病気は、定期的な健康診断(労働安全衛生法66条で義務付け)で、ある程度は予防が可能です。しかし、近年特に顕著となって来ている《うつ病》等の心の病には、まだ対策法が確立しているとは言えないでしょう。しかも、身体の病よりも心の病の方が、職場復帰に時間がかかるケースも少なくありません。
そのため身体的な病気のみならず、《うつ病等の心の病に対する正しい知識》や《経営としての事前事後の対処法》を整備しておくことが非常に重要になるのです。もちろん、そうした制度の悪用に対しても、対抗措置が必要になることもあり得ます。
法律が求める経営義務の視点のみならず、《健全な事業運営を促進する》という広い観点から、従業員の健康管理と健康を害した際の対応策について、具体的なご支援をいたします。
まずは、ご遠慮なくご相談をお寄せください。