意外と少ない遺族に対する遺族労災補償

会社が公的保険である労災保険に加入している場合、従業員が業務中の災害で、障害を負ったり、死亡したりした際には、労災補償給付金が支給されます。

たとえば、業務災害で死亡した場合に遺族に支払われる『遺族補償年金』の目安を見てみましょう。年金額は、原則として亡くなった人の被災前直近3ヶ月間の賃金総額から算出された給付基礎日額と、その人に生計を維持されていた遺族数に応じて、支給されます。(但し妻以外の者は、一定の年齢要件または障害要件に該当しなければ受給資格者となることはできません。)

ここで特筆すべきことは、労災補償の給付は被災者によって生計を維持されていた人の生計維持を主眼としたものであり、同人の逸失利益や慰謝料の性格を有するものではないということです。

【遺族補償年金の支給額】

遺族数遺族補償年金
1人給付基礎日額の153日分(55歳以上の妻または一定の障害状態にある妻の場合は給付基礎日額の175日分)
2人給付基礎日額の201日分
3人給付基礎日額の223日分
4人以上給付基礎日額の245日分
※給付基礎日額…生前の直近3ヶ月間の賃金をその期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額のこと。

月収30万円の人や労災で死亡したケースで試算すると…

たとえば、月収30万円(賞与なし)の人が、6月に労災で死亡したと仮定すると、給付基礎日額は90万円÷92日=9,782円です。この人に生計を維持されていた遺族が、40歳の妻と小学生の子供1人の合計2人だった場合、遺族補償年金額は9,782円×153日=1,496,646円で、約150万円です。(この遺族に支払われる労災補償は、遺族補償年金の他に、一時金としての遺族特別支給金300万円と葬祭料608,460円です。)

ただし前述の通り、この遺族補償年金の支給対象となる遺族は、『亡くなった労働者に生計を維持されていた者』でなければなりません。つまり、亡くなったのが独身者で、生計維持関係にある親族がいないようなケースでは、遺族補償年金の受給対象者は0になるのです。ただ、その際には、年金ではなく遺族補償一時金が、父母等の一定の遺族に支払われますが、その金額は、給付基礎日額の1,000日分となり、上記同様月収30万円の人が亡くなったケースで、約978万円程度となります。(このケースでも、遺族補償一時金の受給者に対し、遺族特別支給金300万円と、葬祭料608,460円が支払われます。)

遺族から会社への損害賠償請求が当然に…!

申し上げるまでもなく、事業主には、従業員の生命や身体が安全な状態で働けるように配慮する【安全配慮義務】があります。

そのため、万が一労災事故が発生した場合、国から支払われる労災補償の内容に納得できない遺族や被災者から、安全衛生法施行規則や民法第415条違反はもとより、労務管理全般の瑕疵を根拠にした損害賠償請求や慰謝料請求の訴訟が頻発していることはご存知の通りだと思います。

労災事故を“起こさないために”しなければならないこと

一度《労災事故》が発生してしまうと、信用の面でも、金銭的な面でも、企業のダメージは測り知れません。そのため、事業主の皆様としては、事故を未然に防ぐ【安全衛生管理】の方針作りと、それを確実に実施するためのルール整備が欠かせないのです。

当事務所では、様々な企業の現場に出向き、【安全管理指導】を行ってきました。そのノウハウをベースに、御社の現状を拝見した上で、今後の方策をご一緒に考えさせて頂きます。詳しくは、是非ご相談ください。